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月を描く理由(わけ)
子どもの頃から夜が少しだけ怖いものでした。
酔って帰ってくる父の気配に胸の奥がざわついて、声にならないまま布団の中で小さく息をひそめていました。決して暴力があったわけでもありません。けれど、幼い私にとって、その空気だけでとても不安でした。そんな誰にも言えない夜、窓の外にはいつも月がありました。
月は何も言いません。
何もしてくれません。
それでもただただ静かに、淡く、そこにある月明り。
どこか見守られているような気持ちになっていました。
あの頃の私にとって月は小さな支えでした。ひとりではないと思えた夜がありました。
だから今、そんなお守りのような月を描いています。
強く眩しい光ではなく、仄かに静かにただ在る光を。
もしどこかの夜、ことばにならない想いを抱えている誰かが同じように空を見上げたとき、そこにも柔らかい月明かりがあったなら…。
そんな願いを込めて、私は月を描き続けています。